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主に心理学の知見をご紹介

成長に必要不可欠な「しなやかマインドセット」の育成方法

教育心理学界でスーパー有名なドゥエック博士による名著「マインドセット〜やればできるの研究〜」を読んでみました。いかにもポジティブ心理学っぽいタイトルでなんとなく読まずにいたのですが。これは「やればできる!」って考え方を持っている人は人生がイージーモードになりやすいということを科学的に証明した本になってます。

しなやかマインドセットとは?

マインドセットは行動の基準となる「信念」みたいなものでして、著者によると人は大きく2つのパターンのマインドセットに分類されるそう。

硬直マインドセット=人間の能力は決まっていて変えられない!って考え方
しなやかマインドセット=人間の能力は変えることができる!って考え方

そして、この本の主張は「しなやかマインドセット」の方が成長し続けることができますよーというお話。

まずは、それぞれのあるあるをもとに自分がどちらに当てはまるかみてみましょう。

硬直マインドセットの人あるある
・人間の基本的な性質や才能、能力、知性は変えられないと信じている
・才能の量はあらかじめ決まっており、死ぬまで同じままだと考えている
・自分にどれだけの才能があるのかが不安になる
・どうしたら頭が良く見えるだろう?みんな僕を天才だと思うだろうか?といったことに思い悩む

しなやかマインドセットあるある
・自分の才能や能力は努力やテクニック、他人の助けなどで伸ばせると考える
・何でも試してみようとするし、チャレンジをいとわないし、困難にも柔軟に対応できる
・チャレンジに失敗しても、自分の才能や能力が原因だとは感じない

とにかく、しなやかマインドセットを持っている人は、失敗を恐れないんで挑戦の数が多くなるわけです。そのため、相対的に成功回数が増えるという論理は納得しやすいところかと。反対に硬直マインドセットの人は「失敗=才能がないor才能がないことの露呈」だと考えてしまうので、必然的に挑戦回数が減り成功できなくなってしまいます。

ただし、ここでとても重要なのは、ドゥエック博士が「しなやかマインドセットは作り出せる!」と考えてるとこ。実際、小学生を対象にした実験でも、子どもたちのしなやかマインドセットを育てたら、大幅にテストの点数が上がったという実験結果が。

というわけで、しなやかマインドセットを育てる方法を以下にまとめていきますので、ご参考までに。

しなやかマインドセット育成法

1.才能ではなく努力をほめる

何かに成功した時は才能ではなく努力を褒めるのがとても重要。成功=才能と結びつけてしまうと、失敗=才能がないと考えてしまい、辛くなるとすぐ諦めてしまうようになるそう。

博士いわく、

能力をほめると、子どもたちは「ああ、僕の能力は固まっているんだ。親がほめてくれるのはそのせいなんだ」と考えてしまう。そして、子どもたちはチャレンジを止めてしまい、失敗を深刻に考えすぎるようになる。これは多くの実験で確認された事実だ。

とのこと。努力ではなくて能力をほめると、人間はモチベーションが下がり、粘り強くものごとに取り組まなくなっちゃうみたい。

何かに成功した時は以下の3つのポイントを意識して褒めることが重要です。

①努力(毎日コツコツ続けたから…)
②戦略(具体的なタスクまで落とし込んだから…)
③選択(自分の好きなデザインを選んだから…)

つまり、自分でコントロールできる要因が成功につながったと考えることで努力が身につくわけですね。

2.努力は大事だけど結果を無視してはダメだよ

努力をほめるのが大事といっても、「結果は無視してOK」って話じゃないので注意。博士いわく、

結果を無視してはいけない。大事なのは、結果と努力を結びつけてあげることだ。 以前に、こんなことを言った親御さんがいた。 「子どもが成功したり、難しいことを学んだときは、とても嬉しくてほめたくなっちゃうんです。でもダメなんですよね?」 そんなことはない。子どもが達成した成功を、ちゃんと努力の結果として認めてあげればいいのだ。

とのことで、もちろん成功をほめるのは重要。あくまで「正しい努力や戦略が良い結果を生んだ!」って事実を、自分のメンタルに叩き込むのがポイントであります。

3.失敗=学習のチャンスと捉える

とはいえ、努力をしたからといって必ず報われるわけではありません。むしろ、挑戦しまくるということは圧倒的に失敗しまくることとほぼ同義でしょう。 なので、失敗の捉え方もかなりキーとなってきます。失敗を深刻にとらえるのも、完全に無視しちゃうのも危険。どちらも硬直マインドセットを育ててしまいます。大事なのは「失敗はとても貴重な学習のチャンスなんだ!」と捉えること。

博士いわく、

もうひとつ重要なのは、両親が子どもの間違いや失敗にどう対処するかだ。(中略)子どもの失敗をポジティブにとらえ、間違いを学習のチャンスとして扱ってあげるべきだ。すると、子どもたちは、失敗を学習のプロセスの一種としてとらえ出し、自らの過ちを利用できるようになる。

とのこと。大人になるにつれて失敗への恐怖は増幅していくので難しい所ですが。

私の場合は目標に向かう時は、計画段階でネガティブな要因を洗い出しちゃって、それに対する対処法を準備しておくようにしてます。「計画段階ではネガティブに、実行段階ではポジティブに」が目標達成の確率を引き上げることは研究で明らかになっているので少なからず有効かと思います。

5.つねに脳のギアを成長モードに入れておく

実は、多くの人はどちらか一方のマインドセットに固定されているわけでなく、ケースバイケースでマインドセットを使い分けています。 たとえば勉強については「やればできる!」と思ってるのに、芸術は「生まれつき才能がない…」とか考えたり。

というわけでドゥエック博士は、ヒマを見ては自分の脳を「成長モード」に切り替えることをオススメしておられます。

毎日、自分に向かって次のように尋ねてみるべきだ。

「今日は何を学びたい?」 「今日は何を教えたい?」 「他人にどんな影響を与えたい?」   それだけで、私たちの心は成長モードに入る。

現代人はみんな忙しいし、日々の暮らしに大きな責任を持っている。だからこそ、自分の心に対して「成長マインドセットの重要性」を叩きこまなければならない。

ってことで、つねに自分の行動や心の声に対して「これは成長か?硬直か?」と聞いてみるとよさげ。

といっても、慣れてないと自分の自動思考に気づくのは難しいんで、まずはマインドフルネストレーニングなどで、自分の脳内の声をキャッチするところから始めたほうがいいでしょうね。

まとめ

2008年に出版されたこの本ですが、今読んでみても学ぶべきところは多分にあり感動いたしました。ともすれば、クリエイターの世界は「才能があるなし」に帰結されがちですが、その思考の危険性に気付けただけでも価値がありました。グッドデザインカンパニーの水野さんも「結局のところセンスはインプットの量に比例する」とおっしゃられていましたが、何かに秀でている人は「しなやかマインドセット」が板についているとも考えられます。いずれにせよ、これまで通り、自分で選択した道を戦略を立ててコツコツ努力していくことにします。

今すぐできるクリエィティブ診断とクリエイティブな人に見られる特徴をまとめてみた

クリエイティブな人とは?

新規かつ実用的なアイデアを作った人

クリエイティブな人といえば?
そう聞かれてあなたは誰を思い浮かべるでしょうか?
答える人によって様々なタイプの人が挙げられると思います。それだけ、クリエイティブという表現は抽象的であり、均一化された明確な定義なないということでしょう。
しかし、科学的にクリエイティブを研究する上では、クリエイティブとはなんなのかを定義する必要があります。 そこで、多くの研究者の中でコンセンサスを得ている一つの定義をご紹介しましょう。

「クリエイティブな人とは、新規かつ実用的なアイデア、モノ、プロセスなどを作った人」

この定義から、ただ単に目新しいだけのものはクリエイティビティとはいえないことになります。もし、そうなら、目新しいものは全てクリエイティブということになってしまいますので、納得感のある定義ではないでしょうか。今回のテストのクリエイティブの基準も、この定義が前提に置かれていることをご理解ください。(この定義が完全ではないことを考慮する必要があります)

30問の質問で測るあなたのクリエイティブ度

それでは、早速あなたのクリエイティブ度を診断してみましょう。このテストは、カリフォリニア大学バークレー高のハリソン・ゴフによって開発されたものです。クリエイティブなパーソナリティを測定するシンプルな手段として多くの研究で用いられてるものです。

クリエイティブ度テスト

以下の30問の質問に対して、自分に当てはまるものにチェックしてください。

1.影響されやすい
2.有能
3.慎重
4.利口
5.平凡
6.生意気
7.保守的
8,従来の方法を好む
9.不満を覚えている
10.自分勝手
11.正直
12.ユーモラス
13.個人主義
14.形式張らない
15.洞察力がある
16.知的
17.関心領域が狭い
18.関心領域が広い
19.アイデアが豊富
20.礼儀正しい
21.独創的
22.思慮深い
23.機知に富む
24.自信がある
25.セクシー
26.良識的
27.きざ
28.従順
29.疑い深い
30.慣例にとらわれない

スコアの算出方法

以下の番号についたチェックは+1点とします。
2.4.6.10.12.13.14.15.16.18.19.21.22.23.24.25.27.30

以下の番号についたチェックの数を-1点とします。
1.3.5.7.8.9.11.17.20.26.28.29

上記の数字の合算点が+10以上である人はクリエイティブな人と強く類似性があると評価できます。

他にもある!クリエイティブな人にみられる特徴シリーズ

診断の結果をみて一喜一憂されている方もいるでしょう。クリエイティブ診断を受けている方の多くが「クリエイティブでありたい」と考えている人だと思います。そこで、カリフォルニア大学バークレー高のパーソナリティ・アセスメント・アンド・リサーチ研究所(IPAR)の研究を軸に、クリエイティビティが高い人の特徴をズラズラあげていこうと思います。

クリエイティブな人はIQが高い?

IPARは、クリエイティブな人とクリエイティブでない人との間にIQの差はあるのか?という疑問を明らかにしています。
その結果

クリエイティビティの高い人は概してIQが高かったが、クリエイティビティの低い人との差はなかった

とのこと。この研究結果から、少なくともIQが高ければクリエイティブになれるとは限らなそうです。

クリエイティブな人の高校時代の成績は一点強化型?

概してIQの高いクリエイティブな人は高校時代も成績がよかったのか?
クリエイティブな人の高校時代の成績にはある類似性が見られることが、研究から明らかになっています。

クリエイティブな人は、いわゆる「オールA」をとるような秀才型ではない。しかし、全体的な成績はそれほど高くなくても、その人がクリエイティビティを発揮する分野の科目の成績は高く、それ以外の科目では平凡な成績というパターンが多く見られる。

つまり、オールラウンダーというよりは、「この教科だけは得意」といったタイプの人はクリエイティビティが高い可能性があると言えます。確かに、そんなタイプの人は一定数みかけますよね。

クリエイティブな人は両親とラフな関係を築く

クリエイティブと呼ばれる人たちには、子供時代の経験においても以下の類似性が見られることが明らかになっています。

・子供の頃に家族から尊重されていた
・自分の好きなことをさせてもらえた
・自主性を育んだ
・両親と過度に親密ではなかった
・両親との関係で強烈なネガティブ体験をしていない※体罰など

両親と親密でないことの重要性は、主に、子供の独立性を損なうような息苦しさがないかがポイントになります。上述のように、クリエイティブな人は子供時代から親と気軽な関係性にあり、それ以降の人生においても、親と快適で親しみやすい関係性を維持していました。

クリエイティブな人は内向的

クリエイティブな人には内向的な人が多いことが明らかになっています。
研究からクリエイティブな人の実に2/3の人が内向的であり、これは世間一般の内向/外交比率と比較するとかなり高いものといえます。

クリエイティブな人は複雑で非対称を好む

クリエイティビティが高い人は「複雑・非対称・緊張的」なものを好む反面、クリエイティビティが低い人は「単純・対称・緩和的」なものを好むということがわかっています。

クリエイティブな人は情報のフィルタイリング能力が低い

クリエイティブな人は、情報を取捨選択するフィルタリング能力が低い傾向があることが、研究で明らかになっています。私たちが環境に適応していくためには、戦略的に不要な情報をシャットアウトする必要があります。そうしないと、有用性の低い情報の洪水にのまれ圧倒されてしまうんですな。しかし、フィルタリング能力が低いことにはメリットもあります。それは、普通の人ならシャットアウトしてしまうような様々なアイデアやイメージを入手し、アイデアの源として保持し続けられることです。その結果、クリエイティブな洞察力や鋭敏な感受性、斬新な視点などが得られるわけです。

クリエイティブな人は「直感」型

出来事や物事を理解する方法にも特徴が見られます。物事を理解する方法には「識別」と「直感」があります。「識別」は、出来事や物事の意味を直ちに解釈し、分別していこうとする傾向。「直感」は、出来事や物事に潜む意味や可能性を理解しようとする傾向です。つまり、簡単にいうと識別型は現実的に考えるのに対し、直感型は事実以上の可能性を想像しがちなわけです。


そして、一般的な人には「識別」の傾向が強く見られ、「直感」型は25%程度に止まります。しかし、クリエイティビティが高い人の実に90%以上もの人が「直感」型だったのです。

クリエイティブな人は結論を急がない

クリエイティブな人は情報の解釈において「結論を急がない」傾向がみられます。情報の解釈の方法には大きく2種類あり、一つは「認識」で、出来事を見てその意味や意義を自由に解釈します。もう一つは「判断」で、出来事を見てすぐに結論を導こうとします。クリエイティブな人は概して「認識」型の傾向が見られることが研究で明らかになっています。

クリエイティブな人は不誠実

「予想通りに不条理」で有名な行動経済学者 ダン・アリエリーによればクリエイティブな人は基本的にとても不誠実な傾向があるとのこと。平気でズルはするし、やたらと言い訳が多いのも特徴。要するにイヤな奴ってことですな笑。ただ、確かに「ズルさ」は言い換えると「柔軟性」と考えることもでき、その柔軟性がクリエイティブに繋がることはイメージしやすいところであります。

クリエイティブな人は嘘がうまい

クリエイティブな人ほど嘘が上手いことを実証した研究がございます。上手い嘘をつくには頭の回転の速さとIQ、そして実際にはない事実を創り出す創造力など、クリエイティビティを構成する要素がふんだんに含まれています。

The Creativity of Lying: Divergent Thinking and Ideational Correlates of the Resolution of Social Dilemmas

クリエイティブな人は横柄

クリエイティブな人に横柄な人が多いというのも有名な特徴。クリエイティビティが高い人ほど自信家が多く謙遜度が低いのだそう。エンジニアに無理な要求を突きつけていたスティーブ・ジョブスのエピソードを思い出すと、妙に納得感がある話であります。

まとめ

クリエイティブな人に共通する要素を書き出してみましたが、一見、ネガティブな側面が多いのが印象的。もしかしたら、あなたがクリエイティブになれないのは「いい人」であるがゆえかもしれません。もちろん、クリエイティビティが高い人でもいい人はたくさんいるでしょうし、明日からイヤな奴になったとてクリエイティビティが高まるわけでは決してありません笑

イヤな奴になる前に試したいクリエイティビティを鍛える方法もたくさん研究されていますので、次回はその辺を紹介できればと思います。